本庄高等学院には制服もなければ校則めいたものもなく、「自ら学び、自ら問う」の校是のもとで、諸法令や公序良俗に反しないかぎり、各人の自由は最大限に尊重されている。そのような環境にあって、芸能活動を行なう生徒も存在し、今春の卒業生の中にもそうしたケースが存した。なお、数年前にも、同様のケースがあったと聞く。
こうした活動について本学院は、一切便宜を供与することはない。当該生徒も、あくまでも自己の責任で学院生活を全うし、学業を優先しながら、みごとに卒業を果した。
卒業式の一週間後になって、スポーツ紙に当該生徒の早稲田大学への推薦進学のことが記事になり。翌日には当人が公式ブログにそのことを書いた。おそらく所属する事務所と綿密に打ち合わせてのリリースであったことと推察する。しかし、その記事の中には、明らかに実情と相違する記述が見える。本学院の基本線に誤解が生じかねないと懸念し、一文を草する次第である。
本庄高等学院は上石神井の高等学院と並んで学校法人早稲田大学が設置する「附属」校であり、卒業生の全員が早稲田大学の各学部へ進学することを原則とする。すなわち、学院の卒業とは、早稲田大学への進学要件をクリアしたことを意味する。もちろん、例えば医学部へ進学したいので早稲田大学への推薦を辞退する...という事例が無いわけではない。しかし、それは極めてレアなケースである。今春の卒業生339名は、一人残らず早稲田大学へ進学する。
ところが、スポーツ紙の当該記事には、「付属校とはいえ、全員が早大に進学できるわけではない。さらに、志望学部に進むには、学年上位の成績をとる必要があった」(日刊スポーツ2014年3月15日)とあった。学院生である本人が、このような誤りを発言するはずは絶対ありえない。取材をした記者の方が、芸能活動と勉学との両立が大変だったという物語を膨らませ、それを強調せんがために、本人が述べてもいないことを勝手に付加したものと考えられる。
誤解のないようにもう一度書く。早稲田大学の「附属」である高等学院ならびに本庄高等学院は、「全員が早大に進学できる」のである。
「志望学部」は学院生それぞれである。この際、推薦のシステムを簡介しておこう。学院生は、各自が得た成績に従い志望学部の選択権が与えられる。各学部・学科には受け入れ枠が設定されているから、枠数が満ちれば次の志望へと振り分けていく。ただしここに、学部よってはその学部特有の要件が掛かる場合もある。すべての授業を英語で行う国際教養学部への推薦を受けるには、所定の英語スコアの要件がクリアされていなければならない...といった類だ。だから「志望学部に進むには、学年上位の成績をとる必要」が必須とはならない。当人が何学部を志望するか、また、その年度の志望動向がどのようになるかによる。早稲田で一般受験の偏差値が一番高い学部は政治経済学部であろうが、では、本学院の成績上位者は毎年必ず政経を志望するのかと言えば、そんなことはない。ちなみに、今春の卒業生で成績トップの者は、政経とは全く異なる学部学科へと進学する。
早稲田大学には「系属」と称する別法人の学校が5つ存する(早稲田実業学校、早稲田中学・高等学校、早稲田渋谷シンガポール校、早稲田摂陵中学校・高等学校、早稲田佐賀中学校・高等学校)。それぞれ個性豊かで特色のある、素晴らしい学校である。しかし、早稲田大学への推薦の要件や状況は区々、「附属」と「系属」には明らかな相違があるが、大学は政策的にその辺をぼかそうとしており、それが今般のスポーツ紙記事にも影響したとも考えられる。記者の方もおそらく他意は無く、当人の努力を称賛しようと加筆されたのであろう。
その点は理解しつつも、この誤解が誤解のまま流布すると、本庄高等学院としては大いに困る。卒業生は全員、早稲田大学へ進学できることをもう一度記すとともに、当該の卒業生が今後も芸能活動と学業とをうまく両立させて、自己を実現されんことを心よりお祈りする次第である。
学院長 兼築信行