一昨年完成した本学院の寮に付けられた名称・早苗寮。早稲田大学創設者の一人である高田早苗から拝受した名前であるが、本学院の寮の名前としてこれほど相応しいものはない。合わせて本学院生そのものの姿を端的に表している名前とも言える。大久保山に植えられた種は、3年間で立派な苗に成長し、早稲田へと植えられ、根付くこととなる。そして根付いた苗はさらに大きく成長し、日本にとって必要不可欠な、そして世界に誇れる新米へとなるのだ。
寮生活が本格的にスタートする入学式の日。大隈講堂前で多くの方が離ればなれになる生活に涙したでしょう。あれから3年が経とうとしているが彼らはなんと立派に成長してくれたことか。親元から離れて暮らす生活は、様々な事を成長させてくれただろう。
家の中に当たり前にあったものが、実はすべてお金によって購入され存在するということも、自身で日々洗濯を行うことも、風邪をひいたときも、思わぬ怪我をしたときでさえも、あらゆることを自分自身で解決し、そしてそれを乗り越える経験をしたはずだ。分かったように思っていたことが実は分かっていなかったと、何度も自覚させてくれたことだろう。
一人になった時の寂しさと、それを紛らわせてくれる友人の存在。そして親への思い。
「うちの息子が、"柔軟剤はXXXがいいよ"なんて言うんです」と言っていた保護者の方の嬉しそうな顔がとても印象に残っている。親元から離すことはもちろん親にとっても辛いことだ。しかし、『かわいい子には旅をさせろ』とはよく言ったもので、彼らはこの早苗寮で確実に精神的な成長を遂げて帰ってくる。親は「あの時蒔いた種が、立派な苗になった」と大きく胸を張っていい。子供の立場としても、親の立場としても、人間の成長を促すのにこれほど効果的なものはないのだ。
寮の完成前、長きにわたり学院生がお世話になった委託ホーム。そこには様々な歴史があったことと思う。ホームホストの皆様には語りつくせない様々な思いがあるだろう。今年、このホームを経験した最後の学年が卒業する。長きにわたり早本生の親代わりを務めて頂いた多くのホストの皆様へ、ホスト卒業生とその保護者になりかわり、心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
保護者の会会長 笠越義和