同窓会の正副会長さんほか幹部の方々と、一夕、高田馬場の居酒屋で飲む機会があった。その時うかがった話の中で一番面白かったのは、早稲田大学の中で本庄高等学院出身者は最も「慶應的」なんです...ということであった。
附属校からの進学者が威張っている大学は慶應だけなのだそうで、他の場合は「附属ですみません」というのが普通らしい。慶應の学生は愛校心がものすごく強いのも有名で、だから三田会は最強と言われている。
さて、この学院長も早大の出身だが、「早稲田を愛している!」など、恥ずかしくてとても公言できない。ところが本庄の出身者は、臆面もなく母校愛を表出するという。
確かに本庄の学院生は何よりも「紺碧の空」が大好きで、肩を組んでその場でぴょんぴょん跳ね上がる独特の仕種で、いつまでもいつまでも歌い続けようとする。校歌も大学入学当初から三番まで正確に歌えるのは、本庄と早実の出身者だけだと言う。早稲田への母校愛を隠さない点で、「慶應的」と言われてみれば、その通りかもしれない。
早稲田はもともと、東大の反体制派学生のために大隈重信が作った学校であった(創立の当初から事情がひねくれている)。私が大学に入学した当時、早稲田の特徴は「野党精神」だと言われていた。その後、総理大臣を何人も輩出したから、最近は全く強調されないが、「野党精神」とは、体制に対し、常に異議申し立てを行い続ける存在ということだろう。だからこそ早稲田人は、ジャーナリズムの世界で大活躍したのである。(もっとも、こりゃ永遠に「与党」になれない、つまり天下は取れないということなのかいなとも思った)
そういう雰囲気の中で学生生活を送ったせいで、私自身、早稲田を愛しているなどと公言する事はできかねる。役職上愛するのが当然みたいに言われれば、逆に心底反発を感じてしまう。
しかし本庄の学院生諸君には屈託がない。これは学校の個性であり、大事にして行きたい美風だろう。
とはいうものの、私自身は本業、一介の文学研究者である。されば唯一の余所者箇所長である本庄高等学院長として、当該箇所をイカ(異化)す存在たらんと、日々心がけている次第だ。
学院長 兼築信行